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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)126号 判決 1973年1月23日

原告

株式会社熊谷組

右代表者

牧田甚一

右訴訟代理人弁護士

宍道進

右訴訟復代理人弁理士

笠井保

被告

特許庁長官

三宅幸夫

右指定代理人

斎藤昌巳

主文

特許庁が、昭和四七年七月一〇日、同庁昭和四七年審判第五〇六号事件についてした審決を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求めた。

第二  請求の原因

原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり陳述した。

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四〇年七月六日、名称を「掘進される坑道の覆工方法」とする発明について特許出願をし、これについて昭和四四年四月二六日出願公告されたが、同年六月二一日、日本国有鉄道から特許異議の申立があり、昭和四六年一〇月一五日、右特許異議の申立は理由があるものとする旨の決定と同時に拒絶査定がなされた。そこで原告は、昭和四七年二月一日審判を請求したが、同年七月一〇日「本件審判の請求を却下する」との審決があり、その謄本は同年一〇月九日原告に送達された。

二  本件審決の理由の要旨

本件拒絶査定の謄本が昭和四六年一二月一日に審判請求人(原告)の代理人に送達されたことは、郵便物配達証明書によつて明らかである。したがつて、本件審判の請求は、右送達の日から三〇日以内である昭和四七年一月四日までにしなければならないものである。しかるに、本件審判の請求は右法定期間を経過したのちの昭和四七年二月一日にされたもので、不適法な請求であり、これを補正することはできないから、本件審判の請求は却下すべきものである。

三  本件審決を取り消すべき事由

本件拒絶査定謄本は、昭和四六年一一月三〇日いつたん出願人である原告に発送されて、その頃原告に到達した。しかし、右拒絶査定謄本には拒絶の理由として、特許異議決定記載の理由によつて拒絶すべきものと認めるとの記載があるだけで、他に拒絶理由の記載がなく、かつ、右特許異議決定謄本は原告に送達されなかつた。そこで、原告の出願に関する代理人笠井保からその旨の連絡を受けた、審査に関する書類の送達に関し特許庁長官の指定を受けた職員である通商産業事務官中村時男は、右拒絶査定謄本の送達が誤りであつたことを知り、原告代理人笠井にその旨を告げて右拒絶査定謄本を返還させたうえ、昭和四七年一月七日本件拒絶査定謄本と特許異議決定謄本とをあわせて再送手続をとり、これらの書類は、同月八日原告代理人笠井保にはじめて正式に送達された。したがつて、本件拒絶査定に対する不服の審判の請求は、昭和四七年一月八日から三〇日の期間内にすべきものであり、その期間内である同年二月一日にした本件審判の請求は適法であつたわけである。しかるに、これを請求期間を徒過した不適法な請求として却下した本件審決は違法であり、取り消されるべきである。

第三  被告の答弁

被告指定代理人は、原告主張の請求原因事実はすべて認める、と答弁した。

理由

原告主張の請求原因事実は、すべて当事者間に争いがなく、右事実によれば、本件審決は違法として取り消されるべきものであることが明らかである。

よつて、原告の請求を認容し、主文のとおり判決する。

(青木義人 石沢健 宇野栄一郎)

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